相続が揉める理由

話合いが整わずに家庭裁判所に持ち込まれるトラブルのうち、相続財産が1000万円以下の事案が、全体の4割を占めています。

財産の多い少ないと、揉める理由は別物です。

理由1 不動産の分割は簡単ではない

不動産の場合、現金のようにきっちりと分割する事は容易ではありません。金銭の多寡だけが「公平な分割」ではないことを、相続人が(例え不服に感じていようとも)納得することが肝心です。

事例1 めぼしい財産は、自宅だけ。兄弟二人で、どう分割する?

兄の立場からは「長男だから・・ 現に居住しているから・・ 親の面倒も見てきたし・・自宅は俺のもの」と思うでしょうし、弟の立場からは「長男だけ財産を貰って、不公平だ」と思うかもしれません。

それぞれの立場の違いで見方は変わります。それぞれに配偶者が居れば、その配偶者の意見も加わります。親子だから分かっている筈だ・・という想いは理解できますが、想いだけで話合いは纏まりません。

分割が難しい不動産の場合は、話合いが難航するケースも珍しくありません。

事例2 田畑は、跡取りの兄に一括して譲りたい。

田畑を全て兄に相続させる場合、弟夫婦には、何を残してあげますか? 同等程度の現金が用意できない場合、どのように弟夫婦を納得させますか?

事例1と同様、想いだけで話合いは纏まりません。

事例3 自宅は兄へ残す。弟へは畑を残し、弟の自宅を建てて欲しい。

弟さんは、そうしたいと思ってるでしょうか? そもそも、その畑には自宅が立てられますか?

都市部近郊の畑であれば生活環境に不足は無いでしょう。弟が、評価額に換算して不服を述べた場合、兄の負担が増える事になります。

弟さんにとって受け入れられない想いであれば、話合いは纏まりません。

農地の処分

例えば、こどもは遠方で会社員をしており、実家の田畑について跡継ぎがいないとき。こどもが相続を受けたとしても、農地は自由に売買(処分)することができません。遠方で会社員をしているこどもに、その手続きを負担させますか?

理由2 「気持ち」は見えない

残念ながら、気持ちを覗くことはできません。相続の現場では、積年の思いが一気に噴き出すということも珍しくありません。

事例1 めぼしい財産は、自宅だけ。兄弟二人で、どう分割する?

兄の立場からすると・・「長男だから・・ 跡取りだから・・ 自分が財産を引き継ぐのは当然だ」と思うでしょうし、 弟の立場からすると・・「現金を貰ったけど、兄とのつり合いが取れていない。不公平だ」と思うかもしれません。

気持ちは見えませんから、思い込みと現実との乖離に驚き、ついつい感情的になってけんかをしてしまうというケースは少なくありません。

事例2 兄嫁が介護で世話してくれたけど、兄嫁は相続人にはならない。

兄嫁の立場からすると・・「何も世話もしてこなかった弟夫婦ときっちり二分の一なんて、不公平だ」と思うでしょうし、 弟の立場からすると・・「法定相続人は兄と自分の二人。兄嫁は他人だから、相続はきっちり二分の一を貰うのが公平だ」と思うかもしれません。

事例3 先妻の子と後妻の子と、どちらが相続する?

先妻の立場からすると「自分は、離婚によって相続人とはならない。築いた財産を、後妻に持って行かれた。くやしい。」と思うでしょうし、 後妻の立場からすると「先妻は、既に慰謝料や養育費の支払いを受けているのに、更に相続を貰うなんて。私との間で築いた財産を、どうして他人に渡さなければいけないの?」と思うかもしれません。

事例4 兄は大卒。弟は高卒。学費の差は?

兄の立場からすると「大学進学は、自分が努力した結果だから、当然のこと。」と思うでしょうし、 弟の立場からすると「兄は自分より学費を多く貰ったのだから、兄の学費同等額の金銭は自分も貰わないと不公平だ。」と思うかもしれません。

理由3 付き合いが遠い

事例1 離婚・再婚(その1)

先妻の子と後妻の子がいる場合、どちらも相続人となります。

「先妻の子は成人しているけど、後妻の子はまだ小学生だから・・」といった事情があっても、法定相続分は同じですから、当然に争いが生じます。

事例2 離婚・再婚(その2)

再婚した妻の連れ子には、当然には、相続権は発生しません。即ち、相続できないのです。

元妻の子が相続権を主張した場合、拒めません。再婚した妻の連れ子と元妻の子との間で、争いが生じます。

事例3 こどもがいない

配偶者(妻)以外に、夫の兄弟姉妹が相続人となります。

めぼしい財産が自宅だけの場合、妻に自宅を処分させて金銭に換価した後に、夫の兄弟姉妹に分割させることは、公平の見地に適っているのでしょうか?

妻が処分に合意するか夫の兄弟姉妹が相続放棄に合意するのか、それ以外に解決策を見出さない限り、争いは激しさを増していきます。