「遺言」と「遺書」は違う
遺言とは、法律で保護されるメッセージ。遺書とは、臨終に際して残すもの。遺書には、法的な効力は生じません。
「遺言」とは何か?
「遺言」とは、遺言者の生前の意思や希望を書面に記したものです。具体的には、自分の財産を特定の人にだけ残したいとか、反対に特定の人には渡したくないとか、そういう思いを残しておくものです。
「遺言」は、遺言者の死亡時にその効力が生じるものです。遺言が効力を発するときには遺言者は死亡していますので、法律で定められた厳格な方式によって作成されていなければなりません。
これに従っていない遺言は法的な効力を生じませんので、注意が必要です。
内容についても、遺言者の意思であればどのようなものであっても良い訳ではありません。法的な効力が生じる遺言とするには、内容についても法律で定められている事項についての意思表示である必要があります。
「遺言」は何故必要か?
諸説ありますが、私の経験上で言うならば、ズバリ「残された者の為」です。
遺言によって被相続人(遺言をした人)の意思が明確になり、相続の手続きがスムーズに行えます。また、親族間での相続争いを防止することが可能です。相続人の中で、遺言者の意思を尊重しようという気持ちが働くからです。
相続の手続きに手間取ると、被相続人の預貯金の払い戻しもできません。葬儀費用や生前の入院費用の支払いも、滞ってしまいます。場合によっては、相続人の誰かが一時立て替えたり、無用な出費をさせてしまうことにもなります。
「遺言」があれば、余計なトラブルを避ける事ができます。相続の手続きもスムーズに行えます。遺言は、「残された者の為」に言い残す、重要なメッセージと言えるのです。
撤回は自由
一度作成した遺言であっても、遺言そのものを撤回したり、内容を書き換えたりすることは自由。いつでもできますので、気が変わったら書きなおせば良いのです。
遺言で出来ること、できないこと
遺言さえ整えれば、内容は何でも実現できる・・という訳にはいきません。
遺言で実現できることは、大きく分けて二つ。「相続および財産処分に関すること」と「身分に関すること」です。
相続および財産処分に関すること
- 相続分や遺産分割方法の指定
- 法定相続分と異なる相続分を指定できます。誰に何を相続させるのか、指定できます。遺留分の侵害に注意が必要です。
- 遺産分割の禁止
- 死後5年以内の期間で、遺産の分割を禁止することができます
- 担保責任の指定
- 相続人が取得した財産が回収不能になったとき、別の相続人に負担してもらうことを指定できます
- 相続人の廃除
- 相続人となる人の相続権を、はく奪することができます
- 特別受益の持戻しの免除
- 生前贈与を相続分に反映させない旨の意思を表示できます
- 遺贈
- 相続人以外の人に財産をあげることができます
- 減殺方法の指定
- 遺留分権利者から減殺請求されたときの対応を指定することができます
- 寄付行為
- 財団法人の設立を目的とした寄付の意思を表示できます
- 信託の設定
- 信託銀行などに財産を信託する旨の意思を表示できます
身分に関すること
- 子の認知
- 婚姻していない女性との間に生まれたこどもを、認知することができます
- 未成年後見人の指定
- 相続人が未成年であるときには、信頼できる人を後見人として指定できます
- 遺言執行者の指定
- 弁護士や行政書士など、遺言を確実に執行してもらうための執行者を指定できます
- 祭祀承継者の指定
- 墓や仏壇などを承継してくれる人を指定できます